こころねのうた

ほんねで歌いたい

上野の山


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藍色の上野の空に浮かび見ゆ銀杏もみぢ葉ひそやかに揺る

日は暮れて上野の空にやはらかな夜の風吹きて葉をゆらしけり

公園に人はあまたにつどひをり寒寒と立つ銀杏のしづけさ

たたかひはいまだ終はらず冬に入るほのぼのとわれはここに暮らしぬ

去年(こぞ)の暮れにチェロアンサンブルを聴きに来し文化会館夜ににぎはふ

暗き庭に咲く撫子をもとむるがごとく浮かぶはうつしみの君

駅前の明るき広場に葉をあつむ少女の声をなごみ聞きゐる

もみぢ葉の葉影うつくし木の下に人を恋ひしく思ふこの夜

落ち葉する銀杏のもみぢ葉手に集む髪長きちひさきをとめ子あはれ

子と歩く夜の動物園の脇道にほおほおと鳴く声響き聞く

暗がりに鳴く声響き師の声のごろすけほおほお思ひ起こしぬ

上野山に沿ひて歩まむ道の隈ゆるく明るし獣の香もする

山際に鳥居立ち立つ御柱(みはしら)はほの暗く白く浮き立ちて見ゆ

鷗外の住まひし家は如何にならむ水月ホテルは閉じて久しき

清水坂を上りてゆかむ東京の上野の山の夜は明るし

坂の上のピアノ教室楽しみに子は駆け出して声はづみづく

レッスンの星に願いを弾き終えてほのかに歌う声の聞こゆる