こころねのうた

ほんねで歌いたい

うつつの夢



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世のなかはひとつの空の下(もと)にあり思ひさだめて人を恋(こ)ほしむ

 

ひとときの言葉をかはせるうれしさは夢の夢なる水無月の空

 

胸のうちに神か宿らむかなしみの果てなる心のうたを編む君

 

五線譜にとどめられたるかなしさを音(ね)に尽くさはば恋ひ震ひ聞く

 

あひ見てのみちびき深き言の葉はさざなみのごと胸に寄すなり

 

子をあずかるなりわひに

ひたすらに子どものうちなる心をば信じて愛でてはぐくみゆきたし

 

さびしさを小さきむねに押しこめて預けられたり泣くこともなし

 

強ばれる子のうら悲し幸多く生きてこそあれ慈しみ抱く

 

弓となりかなたへ遠く飛ばさむよ矢のごとく強く子らよ飛びゆけ

 

赤松の木

三毳(みかも)山の小楢(こなら)の峰に枯れて立つ赤松の木をいくたびか見ゆ

 

楢の木の山の小道にひと本の赤松の木をさびしみて見ゆ

 

さみどりの松葉茂りし赤松は枯れ死にてなほ山に立ち立つ

 

いかにして死にゆきにけりたまきはるいのち尽きたり三毳の赤松

 

山に死ぬ人の体はけだものに喰はれてくさり朽ちて知らへず

 

死してなほ山に立てをり人の世を枯れて見下ろす松の木を恋ふ

 

二上山の峰にしづまるうら若き大津皇子をしきりに思ほゆ

 

悲しみの器なる身は赤松を宿りに抱きて吸はれ消え果つ