われ独り重荷を負ひてぬかるみをゆく心地して人を羨しむ
許すこと忘るることと思ひおよびパッヘルベルのカノン聞こゆる
元年のはじまりの雨は降りやみて朝(あした)の空は澄みてあをめる
窓をあけて土のにほひを吸ひこみぬ今朝真新し雉の足あと
広島に届け折り鶴二人子と椅子に並びて黙(もだ)し鶴折る
たたかひの史を学ばむ はらからの過ちは はらからが贖ふ
しろがねの針の雨ふる盂蘭盆の庭に濡れ咲く黄のをみなへし
紫蘇の葉を庭に摘み出てひぐらしの声聞こえくる夏の夕暮れ
洋なしの味はなつかし真裸に閨にまろびて甘き実を食す
ひらひらと羽のひとひら舞ひ落ちて秋の庭辺に鳩の声する
いかにせむ魔法をつかへますやうにサンタクロースに子はたのみけり