こころねのうた

ほんねで歌いたい

真の春(まことのはる)

初春に

千両の朱きを飾らむあたらしき丑の年神迎え入れたし

自粛するこの正月は残りたる栗きんとんをわれ一人食(お)す

思川

深々と情(じょう)に棹差し流されて沈みゆく身のたづき知らずも

わたくしの能(あた)ふかぎりに二人子をはぐくみ糧を得る術ぞ欲し

三月二十五日

たをやかなチェロを聴きたるこの夜の東京タワーはうつくしく照る

ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 op.19より

機関車が煙を吐きつつひた走りラフマニノフを乗せて轟く

耳朶(じだ)深く鐘の音を聞くうらがなしラフマニノフを乗せてゆく汽車

春の日の物悲しきは轟きと黒き煙にかき消されたり

スピードをぐんぐんあげてひた走るソナタのなかなる蒸気機関車

桜の花はや咲き満ちて寒々し我が心(うら)ゆさぶることもなかりし

人みながマスクをはづして相見あひいとをしむ真(まこと)の春し来まさね

ある歌によす

君がうた響きくるらし里山は花咲き初むよ春のしじまに